
近年、実在する警察署や行政機関、金融機関などの電話番号を着信画面に表示させ、相手を信用させようとする「電話番号偽装詐欺」が問題となっています。
これまで電話番号は、相手の身元を確認するための重要な手掛かりでした。しかし、現在では表示されている番号そのものが偽装されるケースがあり、番号を確認しただけでは安全性を判断できなくなっています。
特に注意したいのが、警察署や税務署など、実在する公的機関の電話番号を装う手口です。
今回は、ITリテラシーの観点から、発信者番号偽装の仕組み、技術的な背景、詐欺電話の見抜き方、そして被害を防ぐための具体的な対処法について解説します。
1.発信者番号偽装とは?
発信者番号偽装とは、電話をかけてきた相手の実際の電話番号とは異なる番号を、受信側の着信画面に表示させる手口です。
英語では「Caller ID Spoofing(コーラーIDスプーフィング)」と呼ばれています。
例えば、次のようなケースが考えられます。
- 警察署の代表電話番号が表示される
- 税務署や行政機関の番号が表示される
- 自宅や家族の電話番号が表示される
- 実在する企業や金融機関の番号が表示される
着信画面には正規の電話番号が表示されているため、受信者は本物の相手から電話がかかってきたと誤認してしまいます。
実際に、警察署などの電話番号を偽装した発信が約197万件確認された事案も公表されています。
つまり、電話番号をインターネットで検索して、実在する機関の番号と一致したとしても、それだけでは発信元の真正性を確認したことにはなりません。
2.発信者番号はどのように偽装されるのか?技術的な仕組み
発信者番号偽装の背景には、IP電話やインターネットを利用した音声通信技術があります。
従来の電話回線とは異なり、IP電話では音声をデジタルデータに変換し、インターネットなどのネットワークを通じて通信します。
この通信では「SIP(Session Initiation Protocol)」という通信プロトコルが利用されることがあります。
SIPは、電話の発信や着信、通話の開始・終了などを制御するための仕組みです。
通信時には、発信者番号に関する情報も信号として扱われます。
本来、通信事業者は発信者番号が不正に書き換えられないよう、適切な認証や制御を行う必要があります。
しかし、通信設備の設定不備や不適切な通信サービスの利用などによって、正規の番号とは異なる番号が受信側に通知される場合があります。
重要なのは、スマートフォンの画面に表示される電話番号と、実際に電話を発信した人物・組織が必ずしも一致するわけではないということです。
これはスマートフォンの故障やウイルス感染とは異なり、電話通信の仕組みそのものが悪用される問題です。
そのため、利用者側だけで完全に防ぐことは難しく、通信事業者による技術的な対策も重要になります。
3.詐欺電話を受けたときの対処法
不審な電話を受けた場合は、相手の説明をその場で判断しようとせず、いったん通話を終了することが重要です。
次の5つを徹底しましょう。
① いったん電話を切る
相手が警察官や税務署職員を名乗っていても、慌てて対応する必要はありません。少しでも不審に感じたら通話を終了してください。
② 公式サイトで電話番号を確認する
着信履歴に表示された番号ではなく、公式サイトや公的機関の案内に掲載されている代表番号を自分で調べましょう。
③ 自分で調べた番号にかけ直す
着信履歴からそのまま折り返すのではなく、公式サイトで確認した番号に自分で発信してください。
④ 個人情報や認証情報を伝えない
氏名、住所、生年月日、口座番号、暗証番号、パスワード、SMS認証コードなどを安易に伝えてはいけません。
⑤ 金銭の要求には応じない
電話で現金の振り込みや送金、電子マネーの購入などを要求された場合は、詐欺を強く疑いましょう。
不安を感じた場合は、警察相談専用電話「#9110」または最寄りの警察署に相談してください。
4.詐欺電話を見抜くためのチェックポイント
電話番号だけで詐欺かどうかを判断することはできません。重要なのは、着信番号と通話内容の両方を確認することです。
特に次のような特徴には注意が必要です。
| チェック項目 | 注意すべき特徴 |
|---|---|
| 発信者番号 | 警察署や行政機関などの実在番号が表示される |
| 国際電話 | 「+1」「+44」などから始まる番号 |
| 音声案内 | 自動音声で番号の入力を要求する |
| 緊急性の強調 | 「今すぐ対応しないと逮捕される」などと脅す |
| 個人情報の要求 | 口座番号や暗証番号などを聞き出す |
| 金銭の要求 | 振り込みや現金の受け渡しを求める |
| SNSへの誘導 | LINEやビデオ通話などへ移動させる |
また、「警察からの電話だから安心」「行政機関の番号だから本物」といった判断は危険です。
相手が名乗った所属や氏名を確認することはできますが、それだけで本人確認が完了するわけではありません。
必ず一度電話を切り、公式の連絡先を通じて事実確認を行いましょう。
5.ITリテラシーを高め、電話番号を過信しない習慣を
デジタル技術の進歩によって、私たちの生活は便利になりました。一方で、その技術を悪用した詐欺の手口も高度化しています。
今回取り上げた発信者番号偽装は、その代表的な事例です。
今後は、電話番号だけでなく、メールアドレス、SMSの送信元、WebサイトのURLなどについても、表示されている情報をそのまま信用しない姿勢が求められます。
大切なのは、情報を受け取ったときに「本当に正規の相手なのか」を自分で確認する習慣です。
ECサポート株式会社では、IT技術の活用だけでなく、安全にデジタル社会を利用するためのITリテラシー向上も重要だと考えています。
「表示されている番号が本物でも、電話をかけてきた相手が本物とは限らない」
この基本を知っておくだけでも、詐欺被害を防ぐための大きな一歩になります。
不審な電話には冷静に対応し、必ず公式の連絡先から確認することを習慣にしましょう。